2020-01-01から1年間の記事一覧

いつかと思った明日が

好日は夜明け。ゆらゆらと。 世界の爪先は私を指している。 出しっぱなしの本の頁を指先でさらさら捲る。 眠ること以外に気力がない。さもありなん。 眠ることも。 あなたは信号を送る。 トンツートントン

今日

レジの前の、床に貼られたビニールテープの枠の中に突っ立って外を見ていると、雨が降り始めた。本屋の店員から「袋は有料ですが、」と言われたとき傘もマイバックも家に置いてきたことに気がついて、自分への苛立ちを隠しながら「お願いします」と言った。 …

無主張無責任虚構神話

まるでポケットから取り出すような手軽さでキミヤは宇宙を作った。宇宙はキミヤの手を離れた瞬間から、僕らの認識する宇宙の体を成していた。はじめから、太陽も地球も多種多様な生物も文明も、ありとあらゆるものが完成されて宇宙は登場したのだ。こんなこ…

さらば、夜明けよ

「照ちゃんは、僕が辛いときにだけ僕のそばにいてくれたらそれでいいよ」と言ったら、照美は、右手に持っていた買い物袋を、わざわざ左手に持ち替え、空いた右の掌で僕の頬をぶった。ぶたれたところが熱くなって、目に涙、鼻に鼻水が溜まってくる。 僕は涙を…

たぶん、このひとときが過ぎたらもう十分だなって思う。僕は手に入れたもの全て失ったと思っていた。でもそれは間違いだ。僕は失ってなんかいなかった。 なにが起こったとしても大丈夫だ 僕はもう、僕の僕らしさと、さよならしたとしても大丈夫。

星を見て泣いた夜

今も覚えてる 眠れない夜のことを 屋上へ続く階段を すり減ったコンクリートと 嫌われ者のバンドマンが 同じ色に染まったんだ 鍵の壊れた柵の外へ出ると 上も下もわからなくなるようで きっとどうかしてたんだね あの日夜空は七色だった あいつがいった 君は…

無題2

僕の職業はコンビニ店員です。ってこの前、ケータイショップの派手なネイルした派手な鷲鼻の女に言ったら、「それではご職業の欄のフリーターに丸をつけてください」と言われた。 僕はコンビニ店員って言っても正社員やっておるねん、なんでアルバイトって決…

無題

‪「山寺がさ、店長ぶん殴ったらしいんよ」 藤木は咥えたタバコのフィルターを噛み潰しながら言った。俺は品出ししてたからわからんかったんやけどと続ける藤木の口端から煙が上がって僕の肩をすり抜けた。 ‪ 「でも、店長の方は殴られたことには驚いていたみ…

正月

‪父親は卓球を始めたらしい。俺が帰ってきたとき、なんでもないって顔で‬‪「卓球はじめてん」と言っていた。‬‪その後、兄夫婦が来たときも同じ感じで「卓球はじめたから痩せるで」って言っていたから自慢したくて堪らないのだろう。‬ そういえば父親が自身の…