2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

淡い 5

電車に二人で乗って、しばらく揺られ、乗り換えてまた揺られる。その間、ふたりに会話はなかった。黙っていると、時間が止まっているような感覚がする。電車に乗れば体を動かさずとも目的地に着く。御田はそれが自分の老いを止めているように感じるのだ。こ…

淡い 4

一年生のとき、御田は他の友達と同じように、向井に必要以上に干渉しないようにしていた。大学にいるとき長い時間一緒にいたが、向井は御田の入っていないサークルに所属しているし御田の知らない友達が向井にはたくさんいる。向井が女の子だということもあ…

淡い 3

それから、御田は恋愛をしなくなった。人は恐らく、好意を言葉にしたり聞いたりすると恋が生まれるようであるが、御田は頭から、恋とか愛という言葉が抜け落ちたかのようだった。稀に人から好意を向けられることはあったがそれを返す気にはなれず、付き合う…

淡い 2

人間というのは不思議な生き物だ。相手のことを知り尽くしているわけではないのに、印象だけで物を言う。それが当たっていても外れていても言われた相手は喜んだり、悲しんだりする。見当違いでも、プラスなことを人に言うやつは気に入られる。御田もよく人…

淡い

透明のグラスのような空気の中に白い煙が上がるところを御田は黙って見ていた。御田の口から吐き出された煙はゆらゆら揺れたあと、冷たい風に流されて、冬の空気に染み込んだ。彼は見えなくなった煙を目で追い続けたが、そこには青い空が満ちているだけで空…

ブログ2

時々、日記的なやつも書きます。

ブログ

ブログというものは自分には難しすぎるので小説を書きます。