2021-01-01から1年間の記事一覧

知らない人の夢

私は孤独の中で歌をうたい 駅のホームで涙を流す 誰もいない。ここには誰もいない 希望の中に住むことができない小さな羽虫 この身を温める灯火ですら、私を理解しない 触れただけでパチリと消えてしまうことも貴方は知らない 生温い愛ならいらない、それよ…

高校の時の友達、あれ、名前なんてったっけ、たしか苗字に「山」って字がついとったと思うねんけど。あかんな。かなり長いこと一緒におったのに、忘れてまうなんてな。まぁ、十年以上前の友達のことやから、堪忍な。 そいつと、その「山」くんと、よく海でキ…

ここに書くことちゃうんかもやけど

あれからどれくらいの日々が過ぎた 「人生は旅だ」......そんなのは嘘だ。 俺は何処にも行けないじゃないか 流れるベルトコンベアの上で 日々を滑らせ運んで行くよ 部品を作る部品になった 身近で容易い欲に溺れた なぁ、あれからどれくらいの日々が過ぎた?…

さよならも言えずに

春は春を待たず、君の生き死にを待って窓から零れ落ちる光と風に揺らめくカーテンをほら、幕開だと言って、無情に無邪気に君は春に呑まれ、春は夏に呑まれ、夏は老い秋になって、冬はその死骸 春は慣性となって、重力となってその進む向きに世界は引き延ばさ…

誰かの望んだ点線

僕とあの子の答えは音楽とMVのなかにあるように思えた。 僕と君の答えは小説と映画のなかにあるように思えた。 僕らの答えは詩と短歌のなかにあるように思えた。 僕とあの子の答えは絵と写真のなかにあるように思えた。 それらは間違いであるように思えた。…

他人を傷つける言葉を言わないのは優しさじゃない

言って欲しい訳じゃない。 言わない人を優しくないという訳でもない。 俺はあんまり言わへんけど、それは優しさではない、ということ。 対企業接客の社会人として失格であろう長髪を上げて固め、耳にかけ、誤魔化しゴマカシ仕事をしている。 最近、いやずっ…

新宿とダンス

空が低くて届きそうね でもきっと私なんにもなれないわ このままじゃ全部がこわくてしかたないわ 18歳になったら失効する権利を 大事にしたままハタチになったよ。 恋人になったら得られない幸せを 大事にしてたら、君はいなくなったの。 空を見る夢を見る …

夜と風邪

星宮は空に向かってクシャミをする。 「ベランダ、寒いやろ、はよ中入り」 部屋の中のハシがガラガラと窓を開けて星宮へ言うと彼女は「もうちょい」と熱心に空を見上げることをやめない。 ハシがため息をついて、星宮は頭の端っこでこっそり、その数を数えて…