さよならも言えずに

春は春を待たず、君の生き死にを待って
窓から零れ落ちる光と風に揺らめくカーテンを
ほら、幕開だと言って、無情に無邪気に

君は春に呑まれ、
春は夏に呑まれ、
夏は老い秋になって、
冬はその死骸

春は慣性となって、重力となって
その進む向きに世界は引き延ばされてゆく
自己中なスポットライト 無自覚うるさい

君は春に呑まれ、
桜の下に埋まり、
まばたき、もできぬうちに
君は帰ってこない

窓から吹き込む春と共に
またたき、
君はどこかへ