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淡い 4

一年生のとき、御田は他の友達と同じように、向井に必要以上に干渉しないようにしていた。大学にいるとき長い時間一緒にいたが、向井は御田の入っていないサークルに所属しているし御田の知らない友達が向井にはたくさんいる。向井が女の子だということもあったが、それよりも友達の距離感というものが御田の中では割と遠い。必要なときは自ら敬遠してきた‟女の子扱い”というやつもした。女の子が苦手でも御田は向井を女友達として見ていた。女として認識することで向井に距離を置いていた。そこから、恋愛に発展することは全く考えていなかった。そんな御田の考えが向井にも伝わったのか、一年生の夏終わり、向井に彼氏ができたことをきっかけにふたりはパタリと疎遠になった。

寒さが厳しく、夜が深々と頭を垂らしている。御田は十九歳で季節は冬だった。御田は友達と酒を飲んだ後、電車のホームを歩いている。夜風が体に触れると胸がドキリとした。隣には向井がいる。帰る道でばったり会ったのだ。向井も飲んだ帰りらしく顔が、ほんのりとピンク色をしている。別段、なにかあったわけではないのに御田は向井に気まずさに似たようなものを感じていた。「なんか、久しぶりだよね」向井が口を開いた。「そうだな」となんてこともないようなフリをして御田も返した。いつも酔っていれば誰とでもスラスラと話せるのに、口が絡まったように言葉が出ない。「御田とはよく一緒にいたのにね、こわいもんだね」「うん」「御田、どうしたの?酔ってる?」向井は笑っている。御田は確かに酔っぱらっていた。「でもさ、やっぱり向井に彼氏ができたのが大きかったよな」言ってから、しまったと御田は思った。「そうだよね」「彼氏とはうまくやってるの?」しかし、一度話題を見つけると滑ったように舌は回る。「それなんだけど、別れちゃったんだよね」向井はおどけたように言った。御田は彼氏の話題に触れたことを後悔しながらも、内心少しほっとしている自分に気づいた。