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淡い 2

人間というのは不思議な生き物だ。相手のことを知り尽くしているわけではないのに、印象だけで物を言う。それが当たっていても外れていても言われた相手は喜んだり、悲しんだりする。見当違いでも、プラスなことを人に言うやつは気に入られる。御田もよく人に「御田ってモテそうだよな」と言われるが、御田自身はあまりモテない。しかし、そう言われると嬉しい。不思議だ。

向井は人を褒めることに関して、プロだ。御田が人の良いところを一つあげる内に向井は十個あげる。しかも、男女問わずフランクに接する向井はかなりモテた。褒めてくれて、周囲から認められていて、空気が読める人間は重宝される。それなのに向井が「私はコミュニケーションを取るのが下手だ」と言うから御田は怪訝な顔をした。「上手いじゃん」と御田が言うと、いつも「そんなことはない」の一点張りで認めようとしない。向井に言わせると「私は私に都合のいい人を選んでいるだけだ」という。それは人付き合いが上手いってことじゃないのかと御田は思う。

前述した通り、御田はモテない。どちらかと言えば昔から女子という存在が苦手だ。御田は決して、不潔な格好をしてる訳でも、とてもブスであるという訳でもなかった。これも前に述べた通り、「モテそうだよな」とは言われるのだ。しかし、この言葉はどうやら現にモテているやつには言われないようだ。

初めて女の子と付き合った時、御田は中学生だった。御田はウブだったのでその子とは手も繋ぐことなく別れてしまった。次の彼女は高校の時にできた。しかし、御田は好きだとかそういうことを言われるたびに皮膚の下がゾワッとするのを感じた。なんで、人は愛を伝えようとするんだろう。見えないものを言葉とか文字にしてあたかも見えるようにしてるだけではないのだろうか。結局は存在しないんじゃないのか。御田は身震いしながらその子と別れた。